カメラの原理
Shade3Dのカメラでは、
物理的なカメラのレンズやフィルムの挙動をシミュレートしています。
カメラの構成を知ることで、よりカメラ設定の上達に役立ちます。
レンズの焦点距離
現実のレンズの焦点距離とは、レンズの「後側主点(第二主点)」と呼ばれる点(後側主面が光軸と交差する点)と
焦点すなわちフィルム感光面が光軸と交差する点との距離をいいます。
後側主面とは、レンズの光軸に平行に入射した平行光線が焦点に収束を開始する曲面を指します。
上画像は、左側に被写体、右側にフィルムがあります。
この図では5枚のレンズが組み合わされていますが、
このように複数のレンズが同一光軸上で組み合わされたものは、
レンズ系と呼ばれます。
光軸に平行な入射光線が一点に収束する位置が、レンズ系の焦点と呼ばれます。
像の位置と大きさ
光軸とωの角度をなす平行光線が焦点距離fのレンズを通過して、
焦点面に長さlの像を結ぶとき、
l = f・tan(ω)
となります。
次の画像の「y’」が「l」と同じ長さです。
物体から前側焦点Fまでの距離をx、像から後側焦点F’までの距離をx’、
物体の高さをy、像の高さをy’、倍率をβとすると、
x・x' = f2
β = f/x = -x'/f
上式はニュートンの公式として知られています。
x・x’は、焦点より右側にあるとき正です。
前側焦点に角度ωで入射した光線は、後側主点から角度ωで出ていくと見なせます。
x’はレンズの繰出(ピント合わせ)にあたります。
物体が無限遠方にあるときx’は0となり、下の式が成り立ちます。
y' = f・tan(ω)
2lがフィルム感光面サイズのとき、2ωが画角となります。
一般にレンズ特性として画角をいうときは、2lはフィルム感光面の対角線距離が用いられ、
特に「対角線画角」と呼ばれることもあります。
また、画角はフィルムに写しこまれる被写体の範囲、すなわち写角と同義で使用されることもあるようです。
画角はレンズの焦点距離だけでなく、フィルム感光面、すなわち焦点面の大きさによっても違ってしまいます。
例えば、35mm判フィルム(ライカサイズ)の場合は、フィルム感光面のサイズは
36mm x 24mmですので、対角線の距離は、
sqrt(36^2 + 24^2) = 43.3 mm
※ sqrtは平方根の計算。「^2」は二乗の計算になります。
となり、
2ω = 2 arctan((43.3/2)/f)
となります。
f = 50mmの標準レンズの場合、
2ω = 2 arctan((43.3/2)/50) = 46.8度
が得られます。
画角の変更は、スクリーン上のパースペクティブ、すなわち2次元のイメージを見るときの
遠近や大きさの実感に大きく影響します。
カメラ固定で画角を変更すると、被写体の大きさと写角が変化します。
主要な被写体の大きさが一定になるようにカメラを移動しながら画角を変更すると、
主要な被写体と背景の遠近感が変化します。
Shade3Dでは焦点距離の表示基準として、35mmカメラのフィルムサイズを採用しています。
焦点距離は、カメラウィンドウのズーム値テキストボックスに表示され、
カメラウィンドウでのジョイスティック部の操作で9mmから720mmまで、
数値入力では範囲の制限もなく、正確な数値を入力することができます。
Shade3Dでは、イメージウィンドウの縦方向、横方向について、
長い方を35mm判フィルムの長辺に一致させるように、
すなわちイメージウィンドウの長辺の画角をフィルムの長辺の画角と一致させるようにしています。
イメージウィンドウの短辺は、両端が適宜トリミングされます。
長辺画角は、
2ω = 2 arctan((36/2)/ズーム値)
となります。ズーム値=50mmの場合、
2ω = 2 arctan((36/2)/50)=39.6度
が得られます。
画角
画角はレンズの焦点距離と画面サイズで決定されます。
画面サイズが2lのとき、画角は2ωとなります。
中央、右の長方形は35mm判フィルムの画面サイズです。
対角線基準の画角の場合の画面サイズは、長辺基準の画角のそれよりも小さいので、
相対的に写し込まれる像は大きくなります。
また、対角線基準の画角だけで見ると、長辺の画角は対角線の画角より小さくなります。